【コラム】​カナダに行ってきます(村木)

現在、自民党衆院議員の杉田水脈氏のLGBTに関する雑誌投稿(7/18発売の「新潮45」)が問題になっている。曰く、「彼ら、彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」から、「(行政の)『LGBT』支援の度が過ぎる」と。この記事は、私には何重にもショックだった。

虹色ダイバーシティは、「LGBTも働きやすい職場づくり」をミッションに掲げて、2013年の設立以降、主に企業のLGBT施策の推進を後押ししてきた。LGBTも働きやすい職場(詳細は虹色ダイバーシティの「VISION」参照 http://nijiirodiversity.jp/aboutus/#aboutus)は、みんなにとって働きやすい職場になる、それが結果として、職場の生産性向上にもつながるはずだ、と話してきたのだ。理論だけではなく、学術機関と共同で5千人以上の当事者の声を集めて、調査研究を積み重ねている。私は「生産性」という言葉を、職場全体に対して、働きやすい職場をつくった結果として向上が期待されるもの、と考えていた。その同じ言葉が、子どもを産むかどうかということをだけを尺度に、人に対して使われた。働く人の幸せのために大事な言葉を、人の尊厳を傷つける言葉として使って欲しくなかった。本当に悔しい。

また、杉田氏は行政のLGBT施策に関して「度が過ぎる」と言っているが、虹色ダイバーシティは2014年から、大阪市のNPOであるQWRCと共同で、大阪市「淀川区LGBT支援事業」を受託している。淀川区の事業費は、この間ずっと300万円~400万円台であり、提案型のコンペで事業者を選んでいる。一人分の年間人件費くらいの金額だが、これで区の職員さんとスタッフが知恵を出し合って様々な事業を進めている。啓発イベントを実施し、ポスターなどの啓発資材をつくり(作成した資材はホームページで公開しており、全国の自治体や学校で2次利用されている)、ホームページやSNSを運営し、月に3回、コミュニティスペースを開催して当事者や周囲の人の声を聞いている。コミュニティスペースは、当初、各回にスタッフを2名配置していたが、LGBTであるだけでなく、障害や貧困の問題など、多重の困難を抱える参加者も多いため、相談員の中に対人援助系の有資格者を配置し、各回のスタッフを4名に増員した。限られた予算の中、職員さんとスタッフの熱意で補って運営しているのが現実だ。この事業を通じて、初めて仲間と会えた、自治体の障害支援や生活支援につながったという人も、実際にいる。その方たちの顔を思い浮かべれば、私はこの事業費が過大だとはまったく思わない。

最後に、LGBTは子どもを持たない、という話。これは事実に反しているだけではなく、子どもを持ちたいと考えているLGBTの若者から未来への希望を奪う発言だ。私たち​と国際基督教大学ジェンダー研究センターが行なった2016年の共同研究のデータでは、1,422人中80人(5.6%)のLGBTが、現に子どもと暮らしている。私の周囲の女性同士のカップルでは子どもを産む人も徐々に増えてきているし、大阪市では男性同士のカップルで養育里親も認められた。自分が当事者かもしれないと気付いた時、私の場合は高校時代だが、子どもを持つ未来はまったく想像できなかった。そこから25年。自分で子どもを持つことが人生の重要事項ではない人も、望んでも叶わない人も当然いるが、と強調した上で、子どもを持つことを望む人には、LGBTであっても、諦めなくていい未来がきっとあるよ、と若い人たちに伝えたい。

ちょうどこのタイミングで、カナダ政府主催のLGBTに関する国際会議がある。
http://www.international.gc.ca/gac-amc/campaign-campagne/erc-cde/index.aspx?lang=eng
私もご招待いただいているので、海外のアクティビストたちがこのニュースをどう見ているのか、是非、聞いてきたいと思う。(村木真紀)​