「ALLYを増やす取り組みに関する調査」報告会

日本たばこ産業株式会社様(JT)と特定非営利活動法人虹色ダイバーシティで実施した調査に関して、報告会を開催しました。本報告会では、LGBTに関するJTの取り組みやALLYを増やす取り組みに関する調査結果等を発表しました。

■イベント名
「ALLYを増やす取り組みに関する調査」報告会

■主催団体
日本たばこ産業株式会社 多様化推進室、特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ

■開催日
2018年6月28日

■場所
赤坂インターシティ

■プログラム
14:00~15:10
・日本たばこ産業株式会社 「LGBTに関するJTの取り組み」
・特定非営利活動法人虹色ダイバーシティ「“ALLYを増やす取り組みに関する調査”報告」
15:10~15:30
・質疑応答

■登壇者
日本たばこ産業株式会社 多様化推進室 室長 和中悠子
特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ 理事長 村木真紀
中央大学大学院 戦略経営研究科 修士 東由紀

以下に、当日の様子をレポートいたします。

日本たばこ産業株式会社様(以下、JT)のLGBTに関する取り組み、ALLYを増やす取り組みについて

最初に、JT多様化推進室の和中様よりご挨拶のあと、JTの取り組みについて以下の内容でご紹介しました。
・ご挨拶
・ダイバーシティへの取り組みの位置づけ
・JTのLGBT/ALLYに関する取り組みの概要

日本たばこ産業株式会社
多様化推進室 室長 和中悠子

●ご挨拶

JTでは2年近くに渡り、LGBTに関する各種施策を真摯に取り組んでまいりました。これまで進めてきた施策について、虹色ダイバーシティとの共同研究で、その効果を調査するという新たな取り組みを行いました。この調査報告会が皆さんのお役に立ち、学び多き場となれば幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

●ダイバーシティへの取り組みの位置づけ

JTでは1999年から2007年にかけて海外事業部門が拡大し、現在では海外事業が占める割合が、国内事業の倍となりました。グローバルに活動する企業にとって、異なる背景や価値観を尊重し、違いに価値を見出すダイバーシティ(多様化)の推進は企業ミッションであり、会社の持続的な成長に繋がると考えて、ダイバーシティの推進を経営計画の課題のひとつとして位置づけています。
これまでJT多様化推進室では、多様な人財の活躍推進に向けて、福利厚生や働き方改革などの環境整備施策や、社内セミナーやeラーニングをはじめとした意識醸成施策などを行ってまいりました。
その結果、2016年には、「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選定されたほか、2016年、17年に「PRIDE指標」でゴールドを獲得するなど、ダイバーシティ推進の取り組みについても評価をいただいています。

●JTのLGBT/ALLYに関する取り組みの概要


LGBT施策については、2016年から虹色ダイバーシティのご協力を得て始めました。
2016年に多様化推進室が開催したセミナーは、まず役員からスタート。その後マネジメント職、次に一般社員と上位マネジメント職から先に参加できる形にしました。また新任マネジメント・新入社員などの節目でも機会を設けてセミナー開催を重ねています。
参加は強制ではなく、参加したい者が自主的に参加する形をとっています。
またJTでは24時間稼働の製造部門があり、セミナーに参加したくても都合がつかない場合もあるため、イントラ内での動画発信やDVDの配付、eラーニングで学べる機会も設けました。そのほか手に取りやすいミニサイズのLGBTハンドブックを制作するなど、身近に感じてもらえる施策を行っています。
現在、多様化推進室主催のセミナー受講者は、累計で約1000人、eラーニング受講者は535人にのぼっています。

LGBTの社内制度は、1月に改訂が行われ、パートナーシップ認定制度がつくられました。同性パートナーでも同居人記載がある住民票を提出するだけで、住宅手当等が婚姻と同様に受けられるものです。住民票提出についてはプライバシーに配慮して、上司を通さず直接人事担当1名にのみにしか情報が伝わらないような仕組みにしています。
また支援制度として、メールによる相談窓口を設置しました。こちらは多様化推進室長だけが担当するということで、プライベートに配慮しています。
さらに理解を深めALLYを増やすために、「ALLYの見える化」を図っています。eラーニング終了後のミニテストに合格した者にレインボーステッカーを配布し、持ち物等に貼ってもらいます。またセミナーを受けた役員や上位マネジメントへフラッグを配布し、デスクに置くなど見える化を推進しています。そのほか社外の方との対面の場で使えるようにレインボーバッジも制作しました。
ここまでが、JTの取り組みについての概要の紹介でした。続いて、JTの取り組みの効果調査結果についての報告が行われました。

ALLYを増やす取り組みに関する調査報

虹色ダイバーシティの村木と中央大学の東様が登壇、今回の調査について紹介しました。
・調査の背景
・調査のベースとなった考え方と調査内容
・調査結果
・まとめ

特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ 理事長 村木真紀

中央大学 大学院 戦略経営研究科 修士 東由紀

●調査の背景

まず村木から本調査が行われた背景について説明がありました。
現在、日本の大手企業の約3割がLGBT等の性的マイノリティが働きやすい職場づくりに向けた取り組みが実施されています。虹色ダイバーシティでも、約150社で研修を提供してきました。しかし1度きりで終わることも多く、実際にどのような効果があるのか、検証は行われていませんでした。
今回、検証の条件が整っているJTから、検証結果の社外公開も含めてOKをいただき、LGBTに関する理解度やALLY(同盟者)としての行動を確認するためのアンケート調査を実施できることとなりました。調査結果を広く公開することで、日本の職場におけるLGBT施策推進の後押しになればと思います。

LGBT施策に取り組んでいる日本の大手企業の多くは、支援体制や社内制度が整ってきていますが、「意識改革が大変」「現場が変わらない」という声をよく聞きます。意識改革が進まず、現場が変わらないと、働きやすくはなりません。
意識改革を進めていくためにも、ALLYをいかに増やしていくかということが大切になってくると考えています。

●調査のベースとなった考え方と調査内容

次に東様から、調査のベースとなった考え方について説明がありました。

研修の効果を評価するために、4つのレベルに分類しました。このうちレベル1の反応、レベル2の学習、レベル3の行動までをチェックして、どのような効果があったのか検証をはかりました。
ALLYの行動指標については、海外の事例を参考にしてアンケート調査票を作成しました。
設問は全28問で、うち回答者の属性が9問、LGBT/SOGI(性的指向と性自認という概念)に関する理解度を確認する設問が9問、LGBTに対する共感度を確認するための設問が4問、ALLYとしてどんな行動をしているかを確認するための設問が5問(9個)、このほかアンケートの感想を書く自由記述欄も設けました。

●調査結果

続いて、村木と東様より、調査結果について説明がありました。

・回答者の属性について



アンケートの実施方法は、社員が閲覧するイントラネットにアンケートフォームを掲載し、任意回答を呼びかけました。
男女比はおよそ8:2で、JT社員の男女比から比べると女性のほうがアンケートに回答した人が多く、LGBTに関して男性よりもやや関心が高いことが現れています。
任意の調査で関心が高い層が主であるためか、研修を受講した人数が多くなっています。なお「職場での独自研修」とは、セミナー受講者が各職場にもちかえって研修を行うといったものであります。

ALLYの自認度を見てみると、年代に関わらず高いという特長があります。他の調査では、LGBTへの許容度は年代とともに階段状になり、年齢が上がるほど許容度が低くなるというのが一般的ですが、JTでは20代はやや高いものの、どの年代もほぼ変わりません。

・理解度について

研修で理解度が上がったかを見てみると、セミナー受講者と未受講者の間では、大きな相関関係が見られ、研修を受けているほうが理解度は高いという結果でした。
また、どのような研修を受けているか、研修受講歴によって違いを検証してみたところ、「支援を求められたら対応できるか」「LGBT/ALLYを適切に説明できるか」の正答率が、eラーニングのみの場合は低い傾向にありました。
また「同性間の法的保障への理解」についてはセミナーの受講歴にかかわらず理解度が低いという結果が出ています。これは報道などで「渋谷区で同性婚が認められる?!」といった断片的な情報を耳にした影響なども考えられます。

・共感度について

次に共感度に関する回答を見ていきます。
共感は、知識と行動をつなぐもので、知識があり、共感が高いほど行動に移しやすくなると考えています。
共感度に関しては、設問が少なかったこともあり、研修の受講有無との相関関係は認められませんでした。
また反対に、研修に共感度がもっと高められるような内容を取り入れていくべきかとも考えています。

・ALLYとしての行動について

行動に関する結果を見てみると、研修を受講している方がALLYとして行動できている相関関係が見られます。
また研修受講歴ごとの回答を見てみると、セミナーとeラーニングの両方を受講している方が、ALLYとしての行動ができている人が多いといえます。
簡単に行える行動として、「レインボーステッカー」の配布を行っていますが、意思を示すツールとしてもっと広げていく必要があると考えさせられました。
また「ほかの人への情報提供」という行動についても、どのような意味があるのか、さらに研修の中で伝えていくべきかと考えます。
理解度が高い人の方がALLYとしての行動ができている人が多いという関係も見てとれます。ただ多様化推進室主催のセミナー受講者に比べ、eラーニングのみの受講者は理解度が上がるものの行動にまで及んでいない傾向があります。しかし理解が行動への第一歩なので、まずは理解するというステップには有益だと考えます。

・研修以外の影響について

研修以外のどのような要素が影響しているかを見てみると、セミナー受講よりも優位性が高いのは「周囲でのALLY活動」です。理解度・行動度ともにプラスの影響が強いといえます。周囲の他の人がALLY活動を行っていると興味を持ちやすく、また自身も行動しやすくなるという環境になります。周囲にALLYを増やしていくことはとても重要だと考えられます。

まとめ

最後に、まとめとして和中様、東様、村木から、次のような意見が述べられました。
大手企業のLGBT研修で、その効果を検証して公表するのは、日本初となる画期的な取り組みだと思います。
他の調査データによると、LGBTへの取り組みに対して、マネジメント職の理解度が低い傾向にあるとわかっておりました。しかし、今回の調査によりJT社員20代~50代の約7割がALLYと自認していて、マネジメント職の理解度も高いという結果が見られました。それは、JTの場合、経営層のコミットメントがあること、継続的な取り組みをしてきた成果だと考えられます。
今後もLGBT当事者にとって働きやすい職場にしていくためには、ALLYを増やしていくことが重要です。職場にALLYのロールモデルとなる人が増えれば、ALLYとしての行動がしやすい環境になり、ALLYもさらに増えていくと考えられます。